在庫が合わない・・管理の甘さが犯罪拡大に
テーマ:最近の犯罪について(163)
店舗で在庫が合わない・・万引きか?内引きか?レジでの間違いか?
そんな時に、その原因究明をきちんとしていないと、、犯罪がどんどん拡大していくという事例をご紹介します。
そんな時に、その原因究明をきちんとしていないと、、犯罪がどんどん拡大していくという事例をご紹介します。
消える在庫商品、従業員と神経戦の末に(日経新聞 2015/6/10 6:00ヨリ)
大型量販店のバックヤードで、入荷したばかりのDVDが箱ごと消えた。防犯カメラには、それらしい箱を持ち出す従業員の姿が記録されていた。シラを切る従業員に対し店側は監視を強めたが、その間も商品の消失は続く。長い神経戦の末、ついに店側は決定的な証拠を押さえた――。
関西にある大型量販店の2階にある事務所で、30歳代の店長は首をかしげた。前日入荷したはずの人気音楽グループ「ケツメイシ」のDVD10枚が入った段ボール箱が見当たらない。店内に設置した防犯カメラの映像を巻き戻してみると、前日深夜、それらしい段ボール箱を持った20歳代の男性従業員が、倉庫から店外に出て行く姿が映っていた。
映像からは箱の中身までは分からない。店長は男性従業員を呼んで問いただしたが、「知らない」とかわされた。疑念を持った店長は、従業員に気付かれないよう「監視カメラ」を駐車場に向けて設置した。
1カ月後、今度はブルーレイレコーダー3台がなくなっていることに別の従業員が気付いた。店長はすぐに、新たに設置した監視カメラの映像を確認した。男性従業員が大きな段ボール箱を台車に載せて倉庫から運び出し、駐車場に止めた自分の車に積み込むまでの様子が映っていた。
■倉庫の天井に複数の隠しカメラ増設
しかし、やはり段ボール箱の中身までは分からない。もっと確実な証拠が必要だった。店長は倉庫の天井に小さな穴を開け、複数の隠しカメラを仕込んだ。保安員として調査会社の社員を派遣してもらい、1日2人態勢で男性従業員の行動をそれとなく見張らせた。
男性従業員も自分が疑われていることに気付いていた。新たに取り付けられた隠しカメラの電源コードを抜いたり、ほうきで天井を突いてカメラを壊そうとしたりする様子が別の隠しカメラに映っていた。その間も店の在庫商品は少しずつ倉庫から消えていった。
さらに1カ月が過ぎ、ようやく決定的な場面が撮影された。ある日の午前4時前、倉庫内で男性従業員がブルーレイレコーダー2台を段ボール箱に入れ、持ち出す様子が監視カメラや隠しカメラに映っていた。店長が問い詰めると、男性従業員は笑いながら「証拠はあるんか」とシラを切った。
店側は、自動車通勤ができない店舗に男性従業員を異動させたうえで、警察に被害届を提出。男性従業員は翌月逮捕され、窃盗罪で起訴された。懲役1年6月、執行猶予4年の有罪判決が確定した。
店側は過去の棚卸しで行方不明になっていた商品と、男性従業員がインターネットのオークションサイトに出した品物とを一つずつ突き合わせていった。ブランド品の財布、腕時計、ゲーム機、小型液晶テレビ……。男性従業員が盗んだとみられる商品は逮捕までの1年9カ月で405点に上った。オークションサイトなどでの売却益は計約950万円になる計算だった。
店側は賠償を求め、男性従業員のほか、身元保証人の父親と祖母を相手取り提訴した。証拠をつかむために要した監視カメラや保安員の費用も、損害額に含めて請求した。
■「管理厳しければ盗まなかった」、開き直る従業員
男性従業員は「たくさん被害を与えてしまいすごく申し訳ない」と反省の言葉を述べながらも、「友人にもらって出品した物も被害額に含まれている」と損害額を争った。店側が商品名を挙げて「これはあなたが盗んだものか」と尋ねると、「正直、数をとってるのでそれが僕かと聞かれると何とも……」と言葉を濁し、「管理が厳しかったら(窃盗は)やめていた」と開き直った。
父親と祖母も「これほど長期、多数の盗難に気付かなかったとは、あまりに従業員や商品の管理体制が甘い」と店側に責任転嫁した。
地裁の判決は、店側が紛失記録を提出できなかった一部商品を除いて窃盗の被害を認め、男性従業員側に875万円の支払いを命じた。監視カメラの設置費用などについても「男性従業員が否認していたことから、証拠収集のためにかかった費用は窃盗による損害に当たる」と認めた。男性従業員側は控訴せず、判決は一審で確定した。
一方で判決は「商品管理体制上、少なからぬ被害が生じていることを速やかに発見できなかった」と、店側の管理の甘さも指摘していた。
男性従業員は法廷で、盗みに手を染めたきっかけについて、在庫のロスが出ても追及がない社内の雰囲気を見て「自分がやってもばれないかなと思った」と話した。怪しまれないように管理の甘い古い在庫から盗んでいたが、欲を出して納品間もないDVDに手を出したことが発覚の端緒となった。
(社会部 山田薫)
大型量販店のバックヤードで、入荷したばかりのDVDが箱ごと消えた。防犯カメラには、それらしい箱を持ち出す従業員の姿が記録されていた。シラを切る従業員に対し店側は監視を強めたが、その間も商品の消失は続く。長い神経戦の末、ついに店側は決定的な証拠を押さえた――。
関西にある大型量販店の2階にある事務所で、30歳代の店長は首をかしげた。前日入荷したはずの人気音楽グループ「ケツメイシ」のDVD10枚が入った段ボール箱が見当たらない。店内に設置した防犯カメラの映像を巻き戻してみると、前日深夜、それらしい段ボール箱を持った20歳代の男性従業員が、倉庫から店外に出て行く姿が映っていた。
映像からは箱の中身までは分からない。店長は男性従業員を呼んで問いただしたが、「知らない」とかわされた。疑念を持った店長は、従業員に気付かれないよう「監視カメラ」を駐車場に向けて設置した。
1カ月後、今度はブルーレイレコーダー3台がなくなっていることに別の従業員が気付いた。店長はすぐに、新たに設置した監視カメラの映像を確認した。男性従業員が大きな段ボール箱を台車に載せて倉庫から運び出し、駐車場に止めた自分の車に積み込むまでの様子が映っていた。
■倉庫の天井に複数の隠しカメラ増設
しかし、やはり段ボール箱の中身までは分からない。もっと確実な証拠が必要だった。店長は倉庫の天井に小さな穴を開け、複数の隠しカメラを仕込んだ。保安員として調査会社の社員を派遣してもらい、1日2人態勢で男性従業員の行動をそれとなく見張らせた。
男性従業員も自分が疑われていることに気付いていた。新たに取り付けられた隠しカメラの電源コードを抜いたり、ほうきで天井を突いてカメラを壊そうとしたりする様子が別の隠しカメラに映っていた。その間も店の在庫商品は少しずつ倉庫から消えていった。
さらに1カ月が過ぎ、ようやく決定的な場面が撮影された。ある日の午前4時前、倉庫内で男性従業員がブルーレイレコーダー2台を段ボール箱に入れ、持ち出す様子が監視カメラや隠しカメラに映っていた。店長が問い詰めると、男性従業員は笑いながら「証拠はあるんか」とシラを切った。
店側は、自動車通勤ができない店舗に男性従業員を異動させたうえで、警察に被害届を提出。男性従業員は翌月逮捕され、窃盗罪で起訴された。懲役1年6月、執行猶予4年の有罪判決が確定した。
店側は過去の棚卸しで行方不明になっていた商品と、男性従業員がインターネットのオークションサイトに出した品物とを一つずつ突き合わせていった。ブランド品の財布、腕時計、ゲーム機、小型液晶テレビ……。男性従業員が盗んだとみられる商品は逮捕までの1年9カ月で405点に上った。オークションサイトなどでの売却益は計約950万円になる計算だった。
店側は賠償を求め、男性従業員のほか、身元保証人の父親と祖母を相手取り提訴した。証拠をつかむために要した監視カメラや保安員の費用も、損害額に含めて請求した。
■「管理厳しければ盗まなかった」、開き直る従業員
男性従業員は「たくさん被害を与えてしまいすごく申し訳ない」と反省の言葉を述べながらも、「友人にもらって出品した物も被害額に含まれている」と損害額を争った。店側が商品名を挙げて「これはあなたが盗んだものか」と尋ねると、「正直、数をとってるのでそれが僕かと聞かれると何とも……」と言葉を濁し、「管理が厳しかったら(窃盗は)やめていた」と開き直った。
父親と祖母も「これほど長期、多数の盗難に気付かなかったとは、あまりに従業員や商品の管理体制が甘い」と店側に責任転嫁した。
地裁の判決は、店側が紛失記録を提出できなかった一部商品を除いて窃盗の被害を認め、男性従業員側に875万円の支払いを命じた。監視カメラの設置費用などについても「男性従業員が否認していたことから、証拠収集のためにかかった費用は窃盗による損害に当たる」と認めた。男性従業員側は控訴せず、判決は一審で確定した。
一方で判決は「商品管理体制上、少なからぬ被害が生じていることを速やかに発見できなかった」と、店側の管理の甘さも指摘していた。
男性従業員は法廷で、盗みに手を染めたきっかけについて、在庫のロスが出ても追及がない社内の雰囲気を見て「自分がやってもばれないかなと思った」と話した。怪しまれないように管理の甘い古い在庫から盗んでいたが、欲を出して納品間もないDVDに手を出したことが発覚の端緒となった。
(社会部 山田薫)
ポイントトとしては、
● 犯人は、在庫のロスが出ても追及がない社内の雰囲気を見て「自分がやってもばれないかなと思った」と供述している。
● 賠償請求された親族も、「これほど長期、多数の盗難に気付かなかったとは、あまりに従業員や商品の管理体制が甘い」と店側に責任転嫁している。
● 判決は「商品管理体制上、少なからぬ被害が生じていることを速やかに発見できなかった」と、店側の管理の甘さも指摘している。
● 犯人は、在庫のロスが出ても追及がない社内の雰囲気を見て「自分がやってもばれないかなと思った」と供述している。
● 賠償請求された親族も、「これほど長期、多数の盗難に気付かなかったとは、あまりに従業員や商品の管理体制が甘い」と店側に責任転嫁している。
● 判決は「商品管理体制上、少なからぬ被害が生じていることを速やかに発見できなかった」と、店側の管理の甘さも指摘している。
犯罪の現場をきちんと押さえないとこの犯人のように「知らない」と言い逃れされ、「証拠は?」と逆に詰め寄られることもあります。鮮明な画像以外は窃盗の証拠とならない判決が先日出ていますので注意が必要です。
カメラ映像「証拠にならず」強殺未遂被告に無罪(読売新聞 2015年05月30日)
大阪市東淀川区の仕出し弁当店で2013年3月、女性従業員を包丁で刺して、金を奪ったとして強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告(56)の裁判員裁判の判決で、大阪地裁は29日、無罪(求刑・懲役30年)を言い渡した。検察側が立証の柱とした防犯カメラの映像が鮮明ではないとして、小倉哲浩裁判長は「被告を犯人と決定づける証拠とはならない」と述べた。
被告は同年3月26日夜、以前勤めていた弁当店に侵入、女性従業員を背後から襲い、重傷を負わせて約16万円を奪うなどしたとして同年10~11月に逮捕、起訴された。被告は捜査段階から否認していた。
公判で検察側は、店の向かいのマンションに設置されていた防犯カメラの映像を証拠として提出。事件当時、自転車に乗る人物が映っており、その自転車の形状が被告所有のものと一致するほか、服装や身長からも被告であることは明らか、などと主張していた。
判決で小倉裁判長は、自転車について「夜間の撮影で不鮮明。同一と言えるほどの固有の特徴があるとは認められない」と指摘。人物についても、特定は難しい、と述べた。大阪地検の北川健太郎・次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応する」とのコメントを出した。
大阪市東淀川区の仕出し弁当店で2013年3月、女性従業員を包丁で刺して、金を奪ったとして強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告(56)の裁判員裁判の判決で、大阪地裁は29日、無罪(求刑・懲役30年)を言い渡した。検察側が立証の柱とした防犯カメラの映像が鮮明ではないとして、小倉哲浩裁判長は「被告を犯人と決定づける証拠とはならない」と述べた。
被告は同年3月26日夜、以前勤めていた弁当店に侵入、女性従業員を背後から襲い、重傷を負わせて約16万円を奪うなどしたとして同年10~11月に逮捕、起訴された。被告は捜査段階から否認していた。
公判で検察側は、店の向かいのマンションに設置されていた防犯カメラの映像を証拠として提出。事件当時、自転車に乗る人物が映っており、その自転車の形状が被告所有のものと一致するほか、服装や身長からも被告であることは明らか、などと主張していた。
判決で小倉裁判長は、自転車について「夜間の撮影で不鮮明。同一と言えるほどの固有の特徴があるとは認められない」と指摘。人物についても、特定は難しい、と述べた。大阪地検の北川健太郎・次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応する」とのコメントを出した。
こうした二つの事例を検証すると、
● 店舗や工場等に設置する防犯カメラの映像は手元まで鮮明に見ることができるだけの性能を要する。
● 自動録画しているだけでは駄目で、在庫が合わないなど問題発覚時にはきちんと検証することが重要。
● 店長やオーナーが店舗にいない時間帯でもきちんと管理運営している、ということを示す。
● 遠隔監視をしている映像を社内教育に使用する等で前向きな労務管理に使用する。
といったことが大切です。
● 店舗や工場等に設置する防犯カメラの映像は手元まで鮮明に見ることができるだけの性能を要する。
● 自動録画しているだけでは駄目で、在庫が合わないなど問題発覚時にはきちんと検証することが重要。
● 店長やオーナーが店舗にいない時間帯でもきちんと管理運営している、ということを示す。
● 遠隔監視をしている映像を社内教育に使用する等で前向きな労務管理に使用する。
といったことが大切です。