緊急事態宣言の中で「営業自粛」を依頼されているにも関わらず営業を行っている店に対して強い口調で休業を求めたり、張り紙や誹謗中傷、いやがらせなどの行為を行われてしまっているケースがあります。
こうした行為を行う人のことを「自粛警察」とか「自粛ポリス」というそうです。
● 無観客ライブを配信していたバーに対し「ライブハウスを自粛してください。次発見すれば警察を呼びます」の張り紙。
● 居酒屋に「このような事態でまだ営業しますか?」「バカ」という張り紙。
こうした行為は正義感から来ているのでしょうが、法令に違反するケースもあります。
今の時期、店側も自粛要請する側も相当のストレスを抱えており、大きなトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
無断で張り紙を貼るのは「軽犯罪法違反」。場合によっては「威力業務妨害罪」
店舗に無断で張り紙をする行為は、軽犯罪法1条33号(みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、もしくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、またはこれらの工作物もしくは標示物を汚した者)違反となりかねません。
暴言が書かれた張り紙を店舗に大々的に貼って店舗経営者が心身疲労させた場合には、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。
原状回復が困難なほど店舗建物に張り紙が貼られた場合、建造物損壊罪(刑法260条)も成立する可能性があります。
侮辱する表現を書けば「侮辱罪」に当たります。「警察に通報する」といった程度では、脅迫とは言えないが、店に火をつける、危害を加えるなどの表現をすると強要罪(刑法223条)が成立します。
張り紙による名誉毀損や営業妨害によって客の人数が減ってしまったり、店主や店員が精神的苦痛を受けたときは、不法行為(民法709条)に基づき、売上減少の逸失利益や店主や店員の慰謝料等について損害賠償請求を受けることになります。
標的は店舗だけでなく、マスクをしていない、子供が公園で遊んでいる、子供が庭で遊んでいる写真をSNSに掲載している・・・と様々なところで「自粛警察」が昔の「5人組」のように行き過ぎた監視をしているようです。ニュースによると、大阪のコールセンターに4月20日までに500件以上あったとのことです。
閉塞感が背景にあるのでしょうが、最近の行き過ぎる他人への攻撃、排除するという行動は危ういものを感じます。張り紙もそうですが、SNSでの他人への誹謗中傷は、たとえその言葉を消したとしてもインターネット上にいつまでも残り続けます。絶対に避けるべき行為だと思います。
こういう時こそ「隣人との助け合い」「地域のコミュニケーションを強くする」ことが必要です。