1年前に盗まれた仏像 ヤフオクで発見され戻る。なぜ仏像盗難が?
盗まれた仏像がヤフオクに出品され、幸いに寺に戻ってきた話を京都新聞2022.5.10のニュースの一部をご紹介します。
京都市上京区の日蓮宗本山・立本寺(りゅうほんじ)から仏像「月天子(がってんじ)」が盗まれ、インターネットオークションサイト「ヤフオク!」に出品された事件で、仏像が返還された同寺が8日、京都新聞社の取材に応じ「夢に見るほど心配していたので、戻ってきてほっとした。仏様を拝むことができる日常のありがたさを感じた」と語った。
月天子は高さ約50センチの木造で、立本寺によると、詳細は不明だが、江戸時代中期から後期に同寺に安置されたという。文化財の指定は受けていない。
昨年6月に境内の刹堂(せつどう)から何者かに盗まれ、行方不明だったが、今月1日、像を納める厨子(ずし)とともにヤフオク!に出品された。「盗品では」と指摘が相次ぎ、2日に出品が取り消され、6日に出品した大分県の古物商会社を通じて同寺に返還された。
立本寺の三木大雲・貫首名代(49)はヤフオク!を見た人からの連絡で出品を知った。寺にあった月天子像と特徴が一致していたことから一刻も早く押さえようと落札を試みたが、どんどん価格が上がるのを見て落札は困難と考え、警察に連絡した。2日に古物商会社に連絡したところ、社長は盗品と知らなかった様子で「すぐにお返ししたい」と申し出た。返還されるまで気が気でなかったが、無事に戻ってきた仏像を見て、ようやく安心できたという。
三木さんは「仏像は僧侶にとって生きている人と変わらない存在。盗まれている間、何度も夢に見た。全国の心配してくださった方のおかげで戻ってくることができた」と感謝する。盗んだ犯人には「お金がなくて仕方なく盗んだのかもしれないと思うと、少しかわいそう。ばちが当たるのではなく、反省し、後悔してもらえたら」と語る。
文化遺産の世界「仏像盗難被害の現状と対策」の中で紹介されている被害
●平成31年には、2月に田辺市本宮町の華蔵寺、白浜町の梵音寺でそれぞれ本尊像が盗まれた。犯人2人は8月に逮捕されたが、一人は新宮市内の古美術商であった。専門知識を持つ業者が手引きしていたわけであり極めて悪質といえる。こうした古物商・古美術商が関わる文化財窃盗はかなり多いとみられる。直接販売のルートを持つが故のことであろう。幸いどちらも取り戻すことができたが、華蔵寺の場合は台座の底部に記されていた多数の墨書が削り取られていた。
梵恩寺の場合は犯人が盗み取ったものの売り捌くことができず(被害直後の地元新聞社の報道が功を奏したとみられる)、由良町内の廃業したレストランの駐車場に放棄され、指紋消しの意図で仏像本体や光背・台座に食器用洗剤が大量にかけられ汚損されてしまっていた。
なぜ仏像が狙われるのか?
なぜ、仏像が狙われるのでしょうか?
●仏像は古美術品として人気があり、高額で換金できる。
●寺は参拝客のいない時間帯など人目につきにくいことが多い。
●参拝を装って下見をすることができる。
●寺は自由に参拝できることが多い。
●無人寺も多くあり、発見まで時間がかかる。
住職が高齢化し後を継ぐ人もいない。過疎化して檀家が減少し昼間は別の仕事をしているなど寺の運営が上手くいかず約2割の寺が無人寺となっている。●今まで寺を管理してきた地域住民が高齢化し、コミュニティが希薄化してきている。
●重要文化材以外は写真など記録がないものも多く足がつきにくい。
●観光客など信心を持っていない人が増えた。
仏像が盗まれると
● 心の拠り所が盗まれたことになり、住職、檀家共に精神的なダメージが大きい。
● 万が一見つかったとしても、修復に高額なコストがかかったりしている。
● 仲介者にお金を払って買い戻した事例もあるようである。
仏像を守るためにどうするのか
●仏像のある場所の施錠の徹底
●無人寺の場合は特に地域住民による定期的な見回り
●仏像の写真、記録を取る
●地域住民間の話し合いによる防犯意識の共有
●防犯監視カメラの設置
●仏像エリアへの不審者侵入検知のための防犯システム設置
●仏像を持ちあげたら検知するセンサーの設置
侵入を検知すると大音量の音や光、メッセージで威嚇撃退。
異常発生時にはサイレン又は音声と光で威嚇撃退。
赤外線センサー