防犯の仕事をしていて、絶対に忘れられない事件の一つが「大阪教育大学付属池田小事件」
2001年6月8日午前10時10分すぎ、宅間守元死刑囚=04年9月に執行=が包丁を持って校舎に侵入し、次々と児童らを襲った。1、2年生の児童8人が死亡、児童13人と教員2人が重軽傷を負った。
平成11年 京都市立日野小学校 小学2年生が不審者に校庭内で包丁で殺害される。
平成13年 大阪教育大学付属池田小学校に包丁を持って侵入した男が1.2年生の教室に乱入し、児童8人死亡、教師を含む15人が重軽傷となる。
平成15年 宇治市立宇治小学校 給食中の小学校1年生の教室に男が侵入し、児童2名が傷害。
平成17年 寝屋川市中央小学校 17歳の少年が教員1人を殺害、教員2人に傷害を与える。
それまでも学校への侵入傷害事件は発生していたが、悪意の度合いも被害の大きさ・悲惨さも大きく違った。
池田小学校の事件後、危機管理マニュアルや防犯装置の整備が進むなど、学校の安全対策が強化される契機となった。
事件から二十年の今日 日経新聞に出た非常に悲しい記事。
それは 予算の関係で、学校の通報システム設置が低下してきているということ。
喉元過ぎて、危機意識が希薄になってきている。
学校現場の侵入者に対する警戒感の低下が鮮明だ。
大阪教育大学付属池田小学校(大阪府池田市)での児童8人殺害から8日で21年となるが、事件を受けて導入された警察への通報システムを設置する学校は年々減り続けており、全国で3割にとどまる。
費用負担などを理由に普及が進まない。
子どもを狙った事件は後を絶たず、整備を後押しする財政支援と地域での危機意識の共有を求める声が強まる。 神戸市の公立小学校は、職員室の壁に「県警ホットライン」と呼ばれる機器を取り付けている。
「緊急」と明示されたピンク色のボタンを押せば、兵庫県警の通信指令室に直通電話がつながる通報システムで、同校の担当者は「110番よりも迅速な連絡と警察官の到着が期待でき、安心感がある」と話す。 こうしたシステムは文部科学省が2003年8月以降、幼稚園から高校まで、不審者が校内に立ち入るなど不測の事態が起きた場合、直接警察に通報できるよう通達で設置を呼び掛けたものだ。
きっかけは01年6月8日、大教大付属池田小の敷地に出刃包丁を持った男が侵入し、次々と児童を襲った事件。学校の安全を見直す転換点となったものの、システムの普及は進んでいない。 同省の18年度の調査によると、全国の幼稚園、小中高校のうち、導入済みは29.8%。11年度は44.7%、15年度は35.4%と年々低下している。
設置には1校当たり30万円程度、点検などの維持費に年間10万円弱かかり、費用は学校側が賄う。埼玉県のある公立小は通達以降、未整備のままで、同校校長は「授業で使う器具やロッカーなどの備品整備に充てられる予算は40万円しかなく、捻出は難しい」。コスト面を理由に撤去を決めた学校もある。 兵庫県警が21年に調査した県内の学校のうち、12.6%のホットラインでボタンを押しても作動しなかったり、音声が途切れたりするといった不具合があることが分かった。 NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は「池田小の事件から20年以上が過ぎ、学校現場や自治体の危機意識が希薄になっている。教訓を生かせていない」と指摘する。
(日経新聞2022年6月8日より引用)
池田小学校の事件をきっかけに、多くの小学校で校門に外周警備用赤外線センサーや防犯カメラが設置され、教室や先生と職員室を結ぶ緊急通報システムが設置された。
弊社およびメーカーの竹中エンジニアリング株式会社には多くの問い合わせをいただき、導入いただいた。
少しでも子供たちが安心して学べる環境づくりができたら・・と多くの大人が望み、そして努力した。
その結果、学校の防犯対策は進んだ・・・はずだった。
ところが「予算がない」
予算がないからできない、ということで、最も大切な子供たちの安全がないがしろにされるのは本末転倒である。
元々学校は地域住民にある程度オープンにしてきた。
その代わり、子供の安全も地域住民が見守ってきた。
それが、門扉が閉じられ自由に出入りができなくなり、センサーやカメラで見守る・・というのは確かに昔の学校との関係を知る人間にとっては残念なことである。
しかしながら、万が一何か事件が発生したら取り返しがつかないことになってしまう。
やはり、守るべきものはきちんと確実に守るための方法を取るべきである。
過去の事件犯人供述
「校門が開いていたので中に入った。」
「施錠されていない門扉より侵入した」
「すれ違った時に教員に声をかけられなかった」
「防犯センサー、監視カメラが導入されていたのに、侵入時切られていた」
職員反省
「パニックになって、隣の教室の先生に声がかけられなかった。」
「防犯センサーが付いているが運用がうまくいかず切っていた」
「パニックになって職員室への連絡ができなかった」
「警察への通報が遅れた」
「犯人を前にしてあわてて防御機器の使い方がわからなかった」
こうした苦い経験を活かしていかないといけない。
ここ数年、「日中の防犯」の必要を提案している。
京都アニメーションの放火殺人事件、大阪クリニックの放火殺人事件・・・
何の関連もない多くの人を道連れに自殺する「拡大自殺」の被害が増えている。
5月24日(現地時間)、米テキサス州の小学校で児童と教員計21人が死亡する銃乱射事件が発生した。
AP通信によると、当日は配置されているはずの警備担当者が不在だったという。
世の中の人すべてに悪意・恨みをもって生きる希望をなくし、犯行に及んでいる。
もし、警備担当者がいたなら、もし外周警備システムがあったら・・・といったことにならないことを
強く望む。
不審者が建物内まで入り込んだときは、子どもたちの安全を守りつつ、速やかに周囲に危険を伝える必要があります。 その手段として「緊急通報システム」をご提案しています。
各教室に非常用押しボタンを設置し、万が一のときにボタンを押すと、職員室のコントローラが異常を表示すると同時に、廊下のフラッシュマルチサイレンが作動して非常事態の発生を全校に知らせます。 ワイヤレスタイプの腕時計型、ペンダント型などがあり、校庭やプールなどどこにいても異常発生をすぐに職員室に連絡することが可能です。
防犯監視システムの導入とシステムを生かした運営が重要。
・防犯監視システムは、設置前に防犯設備士、総合防犯設備士と事前に打ち合わせを行い、周辺環境、学校種別、規模、建物配置などを確認し上で、目的、設置場所、運用方法を明らかにして導入を決定する。
・誰が、どのように防犯監視システムを活用するのか事前に学校内で検討する。
・侵入を抑止する方法と、侵入など異常発生をすぐに職員室などに連絡する方法、警察など外部にすぐに助けを呼ぶ方法を検討する。
・防犯監視システムは、システムのスイッチが切られていないか、いたずらされていないかなどを定期的に点検し、点検担当者を決めて実施する。
・システムの使用方法に関して教員は充分に訓練を行う。