「パワハラ」「セクハラ」は一般的に知られており、2022年4月「パワハラ防止法」が中小企業でも義務化されました。
6月には「コンプライアンス対策」が義務化されています。
職場の3大ハラスメントとされるセクハラ・パワハラ・マタハラ(パタハラ)をはじめ、人格否定や無視を行うモラハラ、取引先からの不当な要求や顧客からの悪質なクレームを受けるカスハラ、飲酒を強要するアルハラなど、これまで典型的とされてきた事例に収まらないハラスメントが増えています。
この10月には任天堂が、カスハラがあった場合には修理サービス行わないと規定に明記するなど企業も毅然とした対策を取るところが増えてきました。
「カスハラ」とは、「カスタマーハラスメント」の略称であり、顧客や取引先などからのクレームのうち過剰な要求や不当な言いがかりなどのことを指す言葉です。
★コンビニで従業員の接客が悪いと土下座を要求した。
★きちんとしたメンテナンス対応をしていても何度もやり直しを要求する。
★要求が通らないと「SNSに書く」と脅す。
★弁護士事務所で弁護士に対して脅迫や侮辱発言をした等。
文句や誹謗中傷、馬頭などが何時間も続き、拘束されることです。
文句を言えば商品を値引きや無償でもらえる、自分の言うことをきかせたい、といったことがあり、背景にはストレスのはけ口になっている面があります。
「お前みたいな下っ端ではだめだ。責任者を出せ」といった要求がエスカレートして、「死ね」「くず」「土下座しろ」「今すぐに対処しろ」「家まで持ってこい」といった無理な要求を行うこと。
特にコロナ禍やウクライナ情勢などで値上がりや修理部品がいつ入手できるかわからない状況では、クレームがエスカレートしてこうした言葉の暴力になることも多々あります。
日本では「お客様は神様」「クレームこそが成長・改善のヒント」といった企業文化がありますが、行き過ぎると従業員が精神的に疲弊してしまうことになります。
度を越した要求や威嚇行為をともなった暴言や金品の請求などは、脅迫や恐喝罪、強要罪や威力業務妨害罪などにあたります。
「同業者の団体でお前の会社の悪評を発表してやる」
「SNS上で動画アップしてやるぞ!」
「お前じゃ話にならないから責任者を呼べ!」
「迷惑料を払え!」
新人スタッフや外国人従業員はもちろんのこと、ベテランの従業員でもこのような威嚇的なカスハラが発生すると精神的に落ち込みます。
耐えきれず、うつ病になったり、離職してしまうのも少なくありません。
深刻な人材不足の原因にもなりえるため、企業としてもきちんとした対策が必要です。
カスタマーハラスメントが増えている背景
カスタマーハラスメントは年々増加傾向にあるといわれていますが、なぜカスハラが増えているのでしょう。
★ストレスが多い
現代社会では、職場、学校、家庭内でストレスが多く発生しています。格差社会や競争社会、ITなどの技術革新、介護など様々な原因でストレスを溜め込むことも少なくありません。
その結果、抱え込んだストレスを解消する捌け口として、逆らえない立場にある従業員にカスタマーハラスメントが行われています。
★ネットやSNSの普及
ネットやSNSの普及によって、さまざまな情報を手に入れられるようになっています。
その中には真実に見せかけた虚偽の情報も多々あります。そのした情報をうのみにしたり、悪用して簡単に匿名で拡散することができます。
誹謗中傷が簡単にできるようになっていることも原因の一つです。
悪評を誰もが簡単に匿名で投稿できます。口コミを手軽に投稿できる現代。「美味しくなかった」「待たされた」「従業員の態度が悪い」「ハラスメントを行われた」「サービスが悪い」といった口コミを投稿する。それを簡単に「いいね」「シェア」する。「2ちゃんねる」のようなサイトもあります。それを見た人々がその企業を悪者にしてしまう場合もあります。
またこうしたことが簡単にできることを背景に「ネットに酷評を投稿してやる」「評判下げてやる」といった脅し文句が、横行してしまっています。
★企業によるサービスの違い
企業によってサービス内容やサービスのレベルが異なるのは当たり前のことですが、サービスに対して独自に基準を定めてしまった一部の人が、悪質な要望を押し付けてくる場合もあります。
たとえば、セルフサービスの店でも「席から水を頼めば店員が注ぎに来るのが当たり前」と考えていると「どうして自分で水を取りに行かないといけないんだ!」と人に詰め寄る行為などです。
★「お客様は神様」といった奉公の精神を履き違えた風習の普及も、カスハラが増加する原因
企業同士が切磋琢磨し、他社を超えるサービスを追求してきた結果、過剰すぎるサービスが増加し、サービスを当たり前と受け取る人が「どうしてしないんだ」と、過剰な要求をするカスハラ行為をしてしまうのです。
企業や店舗は、「カスタマーハラスメント」に対する対応はきちんと行う必要があります。
その前提として、単なるクレームなのか、カスタマーハラスメントなのかをきとんと判断する必要があります。
企業活動の中で、商品やサービスに問題があり、それに対してお客様から意見を頂戴することは多々あります。
そうした意見やクレームは従来通り、商品やサービスを改善し、より良いものにしていくために大切なものであり、そうした意見やクレームに真摯に耳を傾け、対応するというのはとても大切なことです。
また、「コンプライアンス順守」は企業として当たり前のことであり、「顧客第一主義」は企業文化として大切に従業員に徹底していくことが必要です。
まずは「クレームを作らない努力」をすることが最も重要です。
その上で、「カスタマーハラスメント」に対する企業の対策について述べていきたいと思います。
カスタマーハラスメントを減らす方法があれば一番ですが、悪質なクレームや嫌がらせをしてくる人を完全に避けることはできません。
企業として従業員を守り、カスハラによる被害を減らすために
●最初から「クレイマー」として扱わず、誠意を持った対応を行う。
●従業員1人に任せない。管理者・責任者がすぐに異常を知ることができる体制をつくる。
●カスタマーハラスメントに対するマニュアルを作成する。
●録画・録音などで証拠を残す。
●対策の責任者を決定し、研修を行う。
●カスタマーハラスメントに対する会社としての規定を社外に発表する。
●警察へ通報、または弁護士へ相談する
① 最初から「クレイマー」として扱わず、誠意を持った対応を行う。
当たり前のことですが、ここを間違うと、そうではない顧客クレームや要望も聞き取れないばかりか、問題を作ってしまうことになります。
② 対応を従業員1人に任せず、管理者・責任者がすぐに異常を知ることができる体制を作る。
何か顧客ともめている、クレームが長引いている、嫌がらせを受けている、という場合に、その対応を従業員1人に解決させず、上司や先輩、社内のクレーム対応係などに連絡し助けを呼べる体制を作ることが必要です。すぐに相談でき、必要があれば上司や先輩が対応を代われるような仕組みづくりが必要です。
その時には、相手を刺激せず、すみやかに通報することが重要です。
責任者・管理者が対応すると、カスハラする人を牽制できます。クレーム対応などの相談窓口といったカスハラに対応する部署を用意し。法的なことも把握した上で丁寧に対応しながら見極めることができます。
下手に出た対応ではカスハラをする人が強気になってしまうため、堂々とした丁寧な対応が重要です。
③ 録画・録音などで証拠を残す
カスタマーハラスメントに対抗する手段として有効な方法が、録画や録音などで証拠を提示することです。
カスハラする顧客に直接対応する際は、ボイスレコーダーを利用して音声による証拠を記録しておきましょう。悪質なクレームや暴言をボイスレコーダーに残しておけば、警察へ提示する証拠になります。
カスハラに対抗する有力な武器となるでしょう。よく電話で「サービス向上のために録音させていただきます」といったメッセージが流れますが、窓口の電話番号にはそうしたメッセージが必要です。
防犯カメラの録画装置で、対応を自動録画しておき、問題発生時に確認することができるようにすることも有効です。
但し、防犯カメラの映像は個人を特定できるため「個人情報保護法」の対象となりますので、店舗などには「防犯カメラ設置目的」などを明記したシールを貼り、あらかじめ録画していることを知らしめる4ことも必要です。企業のプライバシーポリシィにも明記しておきましょう。
取引先との想定されるトラブルを避けるため、事前に取り決めを書面に残しておけば、万が一トラブルになった際に物証として提示できます。
④ マニュアルを作成するカスタマーハラスメントに対する社内マニュアルを作成しておくくことで、さらに被害を防止できます。
カスハラ対応時の方法を社内で定めておき、トークスクリプトを用意しておくことは有効です。
このようなマニュアルを整備し、どの従業員もカスハラ対応できるようにしておけば、対応や精神的ダメージの軽減につながります。マニュアルには想定されるカスハラへの対応を記載しておきましょう。
⑤ 対策の責任者を決定し研修を行うマニュアルを理解し、万が一の時に速やかに対応できるようにするために、またカスタマーハラスメントによる従業員の離職を防ぐためにも、カスタマーハラスメント研修を行って、対応する知識を身につけましょう。
正しい知識をつけておけば、不要なトラブルを回避できます。また過去に受けたカスハラ事例や対応策などを共有しておけば、同じカスハラが発生した際に一貫して対応できるでしょう。
アルバイト・パートなどにも教える必要があります。
⑥ カスタマーハラスメントに対する会社としての規定を社外に発表する。
カスタマーハラスメントに該当する行為の例として、「威迫・脅迫・威嚇行為」「侮辱、人格を否定する行為」「プライバシー侵害」「過剰なサービス要求」「オペレーターを長時間拘束する行為」「SNSやネット上での誹謗中傷」など。あくまで例であり、「社会通念上相当な範囲」を超えれば対象となる。と明記し、これらの行為があった場合は、交換や修理に応じない場合がある他、悪質な場合には警察や弁護士と連携して対処するといった内容を記載することが抑止に繋がります。
⑦ 警察へ通報、または弁護士へ相談する業務に支障をきたし、企業の業績低下にもつながるカスハラは、社内だけでは対応しきれない場合もあります。
「社内で対応しきれない」「従業員に危険が迫っている」と危機を感じた際はすぐ、警察へ通報し弁護士へ相談しましょう。
警察や弁護士にボイスレコーダーや録画映像、書面などの証拠を提示すれば、さらに有利になります。
緊急通報システム腕時計型送信機、ペンダント型送信機を従業員が携帯し、助けを呼びたい時にさりげなく押すだけでバックヤードや、離れた場所にいる管理者・経営者などに異常を自動通報します。
瞬時にメールで、その後電話であらかじめ設定した通報先に知らせることができます。
無線式のため、どこにいても押すだけで連絡できます。
遠隔監視システムi-NEXTを併用すると、管理者・経営者は外出先や自宅などどこにいても、事務所や店舗の様子をリアルタイムの動画と音声で確認できます。
カメラをズームしたり、動かすことで見たい画角の見たい映像を確認できます。
トラブルなど発生時には「録画」ボタンを押すことで、最大30秒前からの動画を録画し確認できます。
そのまま必要な部署に動画をメッセージをつけて送信することも可能です。
映像の情報漏洩対策も完備。