スタッフブログ
「窃盗」と「強盗」の違いは?
ニュースで「窃盗」「強盗」といった言葉をよく聞きますが、両者には大きな違いがあります。
それは、相手を脅したり暴行したかどうか?ということです。
他人の物を盗む行為の場合、「窃盗」か「強盗」になります。
法律的な説明をすると
他人の財物の占有をその者の意思に反して奪った場合,窃盗罪か強盗罪が成立します。
窃盗罪と強盗罪の違いは,暴行又は脅迫を用いたのか否かという点にあります。
したがって,他人の見ていない隙にその者の財物を奪い取ったら窃盗罪ですが,相手に暴行を加えたり脅迫をして反抗を抑圧した上で財物を奪った場合には強盗罪が成立することになります。
ややこしいのは、本人は「誰もいない」「見つからない」と確信して侵入した時に、たまたま家人が戻ってきたり、起きてきてばったり出くわす場合。
窃盗犯にとっては大パニックの状態です。
もともと
侵入前には「下見」をして「犯行が無事に終わる安全な環境」を選びます。安全性・容易性・確実性を考えて侵入先を選択します。
それでも
侵入して犯行をしている間は非常に緊張状態にあります。
そうした中で、突然人と出くわした・・・
ただの窃盗のつもりだったのが、「居直り強盗」に変わる、といったことになります。
そして運悪く、傷を負わせたり、死亡させてしまう・・・といった悲劇も後を絶ちません。
7月28日に発生した事件をご紹介します。(朝日新聞7月28日より一部抜粋)
金品を盗もうと民家に忍び込み、住人の女性を殺害したとして、逮捕された男(31)を強盗殺人と住居侵入の疑いで逮捕し、発表した。
「お金を盗もうと侵入したら見つかったので殺してしまった」と容疑を認めているという。
捜査1課によると、浦容疑者は27日午前11時半~午後4時前、同市尾上町今福の民家に侵入して1階を物色中、この家に住む住民(87)に見つかり、住民の首を腕で絞めて殺害した疑いがある。
同日午後4時前、「隣人を殺害してしまった」と110番通報があり、駆けつけた警察官が1階の寝室で仰向けに倒れているのを見つけた。
今回の犯人は、とっさにかっときて首を閉めたら、相手がなくなってしまい、少し冷静になった時点で自首をしたということです。
窃盗と強盗では罪に対する罰則も大きく異なります。
まして、強盗致死ですからさらに重くなります。
●窃盗罪
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
暴行や脅迫を手段として他人の財物を奪うと、強盗罪として「5年以上の有期懲役」に処せられます(刑法第236条)。有期懲役とは1か月以上20年以下の懲役のことをさし、
強盗罪の刑期は5年~20年の範囲で決定されるのです。
●強盗罪
強盗行為によって人を負傷させた場合に成立する犯罪です(第240条前段)。このうち、負傷させることに故意がなかった場合を強盗致傷、故意があった場合を強盗傷害(強盗傷人)という。
刑罰はいずれも「無期または6年以上の懲役」が適用されるが、傷害の故意があるかどうかは量刑判断に影響する可能性がある。
●強盗致死
強盗行為によって相手を死亡させた場合に成立する犯罪(第240条後段)。殺意はなかったものの強盗の機会に相手を殺害した場合の強盗致死と、殺意をもって相手を殺害して財産を奪った場合の強盗殺人が含まれます。
刑罰はいずれも「死刑または無期懲役」、量刑判断で刑に違いがでる可能性はある。
「鬼平犯科帳」という時代劇の中で、窃盗団でも「犯さず、殺さず」金品のみを盗む窃盗団と、店子に侵入し金品だけでなく家族や従業員全員の命も奪う窃盗団が出てきます。
犯さず殺さずする侵入窃盗行為を彼らは「お勤め」と呼び、長い時間をかけて、仲間を引き込みとして下働きに送り込んだり、絵図面を入手したりして、人知れず侵入し発行を終えるように工夫していました。
鬼平や同心も、皆殺しにする窃盗団はその場でバッサバッサと切り捨てましたが、犯さず殺さずの窃盗団に対しては情のある捕獲や刑罰がありました。
実際には、江戸時代は 窃盗に対して今より厳しい刑罰でした。
今の六法にあたる「公事方御定書」では、「10両以上のお金を盗むと死罪。また、他人宅などに忍び込んで物を盗んだ場合は、金額の多寡にかかわらず死罪」とされました。
死罪も市中引き回しの上竹やりで刺されて死刑。首はさらし首・・・と非常に惨たらしいものでした。
そんなに厳しい刑罰があっても窃盗がなくならないのが人の常。
浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ 石川五右衛門