「窃盗症」・・聞きなれない言葉だと思います。
中日新聞の10月26日付け記事に、この「窃盗症」に関する記事が出ていました。
<窃盗症(クレプトマニア)> 物を盗む衝動に抵抗できなくなる精神障害。ギャンブル依存などと同じ「行動プロセスの嗜癖(しへき)」に分類される。米国の精神医療の診断マニュアル(DSM-5(ローマ数字の5))では、窃盗で摘発される者のうち4~24%が窃盗症に該当するとの推計もある。
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◆根底に空虚感 専門医「治療が必要」
衝動的に万引を繰り返す精神疾患「窃盗症」(クレプトマニア)が社会問題となっている。自分の意志では抑えられない病で、やめられずに苦しむ人は少なくない。窃盗は再犯率が高いが、累犯者の中には窃盗症の該当者が一定の割合でいるとみられ、専門家は「治療が必要」と強調する。
「被告人を懲役一年八月に処す」。今月九日、静岡地裁であった公判。常習累犯窃盗の罪に問われた被告の主婦(49)=静岡市清水区=は法廷で、判決に耳を傾けた。はなをすすり上げる音が時折、廷内に響いた。
主婦は七月、静岡市内のスーパーで果物などを盗んだとして逮捕された。窃盗の前科は五犯。刑務所にも一回服役したことがあり、昨年九月に出所してから一年足らずの再犯だった。
主婦は酒を飲まないにもかかわらず、カクテルなども盗んでおり、公判中に「自分の行動に説明がつかない」と述べた。過去に精神科医から窃盗症の診断を受けており、弁護人は「治療に専念させるべきだ」と訴えたが、累犯のため実刑は免れなかった。
刑務所では、窃盗の再犯を防ぐ指導プログラムは確立されていない。群馬県渋川市には、全国でも数少ない民間の治療施設・赤城高原ホスピタルがあり、竹村道夫院長(69)は「窃盗症の場合、服役しても症状の改善は望めない」と語る。
窃盗症の定義には諸説あるが、米国の精神医療の診断マニュアルは「盗む直前に緊張が高まる」「盗むときに快感や解放感を得る」などの基準を示している。竹村院長は「盗む衝動を抑えきれない病。生活に困って物を盗んだり、職業的に窃盗をしたりする者とは区別される」と解説する。
過食症などの摂食障害、アルコールや薬物依存症、不安障害などを併発する患者が多い。睡眠薬などの処方薬を乱用し、めいてい状態で物を盗むこともある。根底には、それぞれが抱える心の空虚感があり、それを埋めようとする中で盗む行動や薬などの物質に依存すると考えられる。
治療では「自助グループ」の活動が柱。回復を目指す患者同士が参加し、仲間の体験談に耳を傾け、自らの経験も話して過去を振り返る。赤城高原ホスピタルでは、回復者から話を聴く「プライベートメッセージ」も実施する。
入院中に症状が再発することも珍しくない。患者が外出中に商品を盗んだ場合、医師に正直に報告させ、迷惑料を加えて返金するように指導している。
竹村院長は「窃盗症はやめようという意志だけでは回復は困難。病気と認め、治療を受けることが必要」と訴える。一方で、治療施設は全国でもわずか。東京や大阪などで自助グループの活動が増えつつあるが、静岡県内にはまだ広がっていないのが実情だ。
(西山輝一 中日新聞10月26日より抜粋)
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「米国の精神医療の診断マニュアル(DSM-5(ローマ数字の5))では、窃盗で摘発される者のうち4~24%が窃盗症に該当するとの推計もある」とありますが、4%と24%はかなり差がありますよね。
でも、何度も再犯を繰り返す窃盗犯。
簡単に大金を手にすることができる、ということもあるでしょうが、、盗みに入って出てくるまでのスリルを楽しんでいる窃盗犯も多いのではないかと思います。
その多くがまともな精神状態ではないと思います。
元刑事の方に聞いた話ですが、一度侵入窃盗に成功するとそのやり方を何度も繰り返すそうです。
例えば、空き巣。人がいないのを確認してから人目につかない侵入経路(窓・扉)から侵入するのですが、無施錠で施錠していないところから入るか、窓ガラスを割ってクレセント錠を開けて入るか、扉をバールでこじ開けて入るか、扉に穴をあけてサムターンを回して入るか、郵便受けに手を入れてサムターンを回すか・・・・と侵入手段の手口は何度も繰り返され、特徴があります。熟練した刑事はその窓ガラスの割り方を見れば「あいつの手口ではないか」と思うことも多いとか。
侵入したら短時間で「金のありか」にたどり着き、盗んで逃走する。
「金のにおいがする」ということで、例えば冷蔵庫や米櫃などに入れてあったへそくりなどもかぎあてる特技?がある泥棒もいるようです。
捕まったら何年も刑務所暮らし。もうやめないと、と思いながらもシャバに出るとまたしてしまう・・
そんな話も良く聞きます。人生の中で刑務所の中で過ごした時間の方が長い、という泥棒もいるようです。
「窃盗症の場合、服役しても症状の改善は望めない」という院長の話にも当てはまりますよね。
私が良く見る鬼平犯科帳で、小さい時からスリに育てられ、スリの技を教え込まれた女スリが
商売人に嫁ぎ、堅気になろうとしながらもどうしてもスリをしてしまうという場面がありました。
鬼平によってスリをする方の指の腱を切られて、もう出来ない・・となるのですが
現代においてはまさか泥棒の腕を切り落としたり、指の腱を切るなんてことはもちろんできませんが
なんとかそうした病気が治る手段があると、もっと泥棒の数がなくなりますよね。