他人の土地へ勝手に入る行為について、住居侵入罪が成立するかどうかは、その土地が住居等の「囲繞地(いにょうち)」であるか否かによって異なります。
このうち住居・邸宅・建造物には、それに附属する囲繞地も含まれると解されています(最高裁昭和51年3月4日判決)。
囲繞地とは、建物に隣接する付属地であって、管理者が門塀などを設置することにより、建物の付属地として利用することが明示されているものです。
たとえば戸建住宅の庭のほか、マンションや公共施設であれば、門塀の内側にある敷地などに無断で立ち入った場合は、住居侵入罪が成立する可能性があります。
ただし土地の性質上、公共の利用に供することが当然に予定されている場合は、その土地に立ち入った人が何らかの不当な目的を有していない限り、住居侵入罪は成立しないと思われます。明示的ではなくとも、管理者が立ち入りを許可していると考えられるからです。
たとえば、商業施設の囲繞地である公共スペースに立ち入る行為については、窃盗などの不当な目的がない限り、住居侵入罪は成立しません。
また、立ち入った土地が住居・邸宅・建造物の囲繞地であることを認識していなかった場合は、犯罪の故意がないため住居侵入罪は成立しません。
たとえば、建物とは関係がない月極駐車場だと思っていたのに、実は建物の敷地だった場合には、立ち入り行為について住居侵入罪は成立しないと考えられます。
住居・邸宅・建造物の囲繞地でなければ、土地に立ち入っただけでは住居侵入罪は成立しません。
たとえば、建物から離れて存在する月極駐車場への立ち入りは、他人の土地であっても住居侵入罪の対象外です。また、マンションなどの敷地であっても、門塀によって外部の土地から区画されていない部分については、立ち入っても住居侵入罪は成立しないと思われます。
ただし、住居侵入罪が成立しない立ち入り行為についても、土地の所有者等が損害を被った場合は不法行為(民法709条)に当たり、所有者等に生じた損害を賠償しなければならない点にご注意ください。